「レジの老人」・レトロ


          レジの老人
財布から金を取り出すのに、
ふつうのひとよりも時間を要する。
排他的なレジ打ちは、
やってられないよ、と急かせるだろう。
好き好んで年をとるのではないのに、
ゴミのように扱うな

と感じる
のは、
ふるさとの父を
想ったからだ。

レジの老人は、
可愛い毛糸の帽子を目深にかぶり、
どこかの国から
紛れ込んでしまった、
小さな白髪の小人のように、
ゆっくりと、
自分だけの早さで、
金を払ったのは自分なのに、
レジ打ちのオンナに、
ありがとうと言って
出ていった。


そして、
戸外へ出ると、
さながら桃色が香りそうな
風のなかで
ふんわりと、
時を見つめている

そのベンチは、
たいそうあたたかいに
違いない




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