「レジ」・レトロ


レジで時計を見る

きみを生んだ日からの習性。

やっとなきながら眠った

きみを置いて

涼風のこみちを自転車できた。

サッシの鍵もたしかめた。

コンロの火は消した。

けれどきみを離れることが

いつも心に雲を創らせる。

真っ白な店内で


割引の赤い値札つきの

惣菜をかごにいれる。

美しい女達が

職場の香りをすこしにおわせ

レジにならぶ。

見るなよ
わたしよ。

マニキュアや

いありんぐや

到底持ち得ない

世界を有するひとびとを。

見下ろされて無いのに

目を背ける。

夕暮れは幾人の女が

子供に溜息

涙

罵倒のシーンを演じることか。


店内の至るところに

見慣れた風景がにじむ。

でももし

きみを産まなかったら

夕暮れの不安は知らなかった。

それはそれで

女としてだけの

自分を真綿でくるみながら

週末には彼氏と

フルコースの世界グルメ

巡りしていたり

温泉に出かけたり

薔薇色の恋に

死ぬまで身をやつしたり

していただろうな

・・と、そのとき

財布を落として

ころがる小銭を

はっしとおさえる

ほんとうのわたし。

夢は

ジャラジャラという

音に消されてしまった。

やっぱりわたしは

揚げものの香りする

家並みへ帰るのだな。

パチンコ屋にこどもを

つれても行けないし、

恋など

この膝の出たジーンズと

いつも同じシャツで

恵まれないはずである。


レジは女の

気持ちが迷路に入りこむところ

その

バーコードを打つ

音色に惹きこまれ

どこにいるのか

ふっと忘れたくなるだけ



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