「にせ時計屋」・レトロ


濃密なネオンの麻薬
詐欺師うようよホンコン

片腕にじゃらじゃら
いかにもその筋のいかつい男が
きょうも売っている
金の、銀のにせ時計

ブランドを文字を良く見ると
一文字スペルがちがっている
男たちはおかまいなしに
いなかものを見つけて
口車


にせ時計屋が
雑居ビルの入り口で
(そこにはクリーニングも
安食堂も、パソコン屋までそろう)
歩くはなっさきに時計を煌かせる
広東語
ワカラナイ


にせものは
ワカリマス

胡散臭い表情の
男を退けて街をあるけば

ぼうふらのように沸くわ
沸くわ

にせ時計売り

あんたなぞに構っちゃいられない
にせ時計売り

目覚めると灰色の朝に
にせ時計売りが
互いの場所取りに
言い争い


わたしはため息をつきながら
脂肪の香りの黒人と
野菜の香りのロシア人と
自分の黄色さを
おぼえながら
エレベーターに


にせ時計屋は
馬鹿な国民をひとめで見分け
猫背のわたしを選ぶ

まちがえる
な
富裕な国といわれようが
わたしはブランドあさりの
旅人じゃない
貧乏学生
に時計
(実はこれならば手が出るが)

時計屋は舌打ち
ちっちっちっこい
ジャパニーズ
上から下まで
旅人ルック


にせ時計屋は
かもじゃないよと右手で払う

わたしは払われ
ぶんぶん唸る
蝿のように街をゆく

どろどろした胸
綺麗なガラスの街の
路地の野菜くず

にせ時計屋の声ひびいて
喧騒は
うしろから

くる




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