「無人踏切」・なっつ

彼が、
赤い花になって散った。
そこは、潮の匂いがつんとする
無人踏切。

・・・・・・・・・・・・・・
さびれた漁業の町。
彼の家から近い町は、
彼が金持ちの令息と知って、
良い話を伝えるはずもなく、

ひとは寄り集まると
「ひでえ不良だったそうだ」と
言った。


・・・・・・・・・
彼は、芝刈りのバイとをして、
やっと貯めた金でバイクを
買った。

不良でもなく、
がり勉でもなく
ごくありきたりな少年が
ごくありきたりの夢を叶えた
それだけのことなんだ。

赤い花びらは、
そよそよと風に魅了され、

生まれた海へ
深い深い
しじまで
辿りつくのだろう


二十年、
彼の豪邸は売りに出され、
借金に追われた家人達は

疾風のように
いなくなった。

いちども、彼の
名前を言わなかった

彼の母が、
ときおり黒い帽子をかぶっては
良く似たバイクを
町で見かけると、

じっと眺めていたと
言うひとも
いた



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