「ミロ」・レトロ


わたしは実は猫舌だったが
彼を覗く瞳を
双眼鏡に変えて
足しげく通った、「ミロ」。


学生のからっぽ財布から
格安のマカロニグラタン

いつも窓際に陣取り
彼を待っていた。

新聞をしずかに
読みたいオジ達。

せきばらい偉そうな時間。

煙草と
音楽と

おおよそ少女には不似合いな店だった。

彼はいつも
自分の靴紐を踏みつけ
すっころんでいた。

カウンターのオーナー親子は
冷淡なためいき。

ミロ

壁と壁がすごくせまいから
身を瘠せさせて
やっと通れる隙間の店。

あのベルの鳴るどあと

彼の泣きそうなウエーター姿
焼きついた心のアルバム。

御茶ノ水丸善の
ほどちかいところ。

狭い路地のおあしす

ただしオジ達の。



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