「白い忘却という雲を越えて」・海猫


 十年の忘却は 空の白さ
 青い海に対立する 白い雲の群れ

 月に語らい
 星と歌い
 夜の雲間で吠え続け
 過ぎ去りし十年という日々を
 刹那に感じていた

 それでも
 変わらぬ人々が
 その雲の果てに隠されていた


 予期せぬ出来事が
 頬をかすめて
 我に返る

 その変わらぬ人々の生き続ける理由
 生きるという
 その白さ

 それが
 十年の空白を
 埋めつくそうとしている


 空白を名残と呼ぶ人々は
 「忘却は生きる証だ」
 という

 例え
 それが真実だとしても
 未来の絆を
 運命の企みを
 予期せぬ出来事を
 誰が想定しただろうか
 十年前に

 ただ
 わたしは
 変わらぬ思いを抱いたまま
 記憶の業績を
 忘れてはいない

 そう
 忘れられない人々が
 手を振りながら
 こちらに向かって微笑んでいる
 辛い悲しみを背負って
 よろよろと歩きながら
 微笑んでいる
 
 堅く心に繋いだ
 誓いにならない言葉
 「わからない」
 という一言の謎
 
 幻と陰を追い
 月を感じて
 星に願い
 太陽の運行に従い
 調和と秩序を保ち
 
 十年の心の拠り所が
 それだけだとしても
 互いの心の所在は
 「あの日を忘れてはいない」
 ということ
 
 再び誓えない誓いを唱えても
 変わらぬ人々が
 今も生き続け
 今も待ち望む
 
 
 ならば いっそ
 わたしは
 その空白を越えてみせよう
 
 天空の白々とした
 白い忘却という雲を越えて
 ともに歩んでみせよう
 
 白い白い忘却の果てを
 21世紀の壁を越えて


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