「アンバー」・丹野まひる


今日もこの場所から見下ろしている。

低く蠢く暗雲がみっしりと空を覆い尽くし、
それは熱風を伴い下界に不安をもたらしている。

だが遥か西につらつらと長く控える山稜だけが
夕刻のオーロラをゆらゆらとまとい、
凝縮しながらエネルギーをはらんでいる。
しばらく瞬きもせず眺めていると、
その輝きの色調も明確に読み取れるようになってきた。 

夕刻のオーロラは、
深く傾斜した陽光により自ずと陰影を増長させ
光のスペクトルを成している。
幾重ものゆらめきが
思い思いに辺りを射抜き変化して止まない。

輝きに慣れてきたのだろうか、
辺りが幾分暗くなったと不意に思う。

いや、そうではないようだ。

暗雲が現実に広がりつつあり、
徐々に夕刻の聖地を侵食しているのだ。 
凝縮し蓄えられていたはずの光は既に
急速に力を失い色調が変化しはじめている。

だがそれは、
自室に眠るアンバーの、
くぐもり、いざなう色調のそれで、
微かな安堵を最後にあたえてくれた。



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