「クリスマスの贈り物」 中村巡夜

穏やかな午後の日差しを浴びて
時間(とき)の頬に触れ、声を聴き
たおやかなその遊泳を眺めている
思いもかけないクリスマス休暇
こわれたからだの破片が突き刺さった
こころはからだの支配を断ち
もうひとつの世界を獲得できるか
薬袋から本を一冊取りだす

僕のサンタクロースがやってきたのは
いくつ頃までだったろう
ある冬はレーシングカーセット
ある冬は野球のゲーム盤
そして、またある冬は━
うまく理解できないけれど
あの頃の彼は現在(いま)の僕よりも
もっと若かったのだ

さっきからずっと女の声がする
微かな声でなにか言っている
それは独り言のようであり
朗読のようであり
誰かとの会話のようであり
僕に語りかけているようであり
僕自身の声のようであり
子守唄のようでもある

目覚めると窓の外はすっかり暗く
枕もとには読みさしの「Carver's Dozen」
つけっ放しのFMからは現代音楽の
こわれた音符がぽろぽろ床に溢れ落ちている
無造作に起き上がろうとすると
劇しい痛みがからだを貫く
痛みのなかから贈られるものの輪郭
やって来るものと去りゆくものと留まるものと

僕のこどもたちはもうじき学校から帰ってくる


詩の投稿作品・1997年


詩の投稿作品


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