「錦繍」・滝野澤紀穂子

真赤な蔦の葉が
杉の大木の
てっぺんまでよじのぼって
天然のクリスマスツリーを作り
風に背を丸める
白い穂のすすきは
冬の海の波頭のように押し寄せる
飛行場の裏手
整地された芝生も
もう夏の色ではなく
晩秋の山野は
確実に
次の季節に移行しようとしている
錦繍の世界は
特定の樹木だけが作り出すものだろうか
限られたものの世界は
単調でつまらないだろう
草紅葉という言葉もあるように
自然界に存在する全ての植物の
燃焼していく姿が
錦繍にかかわっているような気がする

凋落の兆を内に秘めた
その限りない美しさの中に
そっと身を置く


詩の投稿作品・1997年


詩の投稿作品


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