「銀のしずく」・makoto sugiura


誰もが足早に道を歩く 今日はにぎわうこともなく 鉄橋さえも冷たく震えている しかしそれも無理はない 今日は朝からどしゃぶりなんだ 大つぶの銀の雨で とめどなく時間は流れて いつしか僕は森の中にいた 幾重にも道は分かれて どう行くべきかわからない どうやら僕は迷ったようだ 美しい銀の霧にまかれて 期待と興奮ははっきりと そして静かに浸透した 誰ひとり夢みることさえなかったが かつての自由が訪れようとしている 足もとの草々は夜明けを歌う 銀の朝露にしっとりと濡れて 憂鬱な予感がささやいて 僕を千年分も混乱させた もう二度と会えないと やっとの思いで伝えると 彼女は別れがつらくて泣いていた きれいな銀の涙を流して さんざんさまよった末 僕は故郷さえ見失った 広大な宇宙にも 同じものは見つからない だから生命よ、永遠に戻ってゆけ かがやく銀の大海原へ 何よりも貴いものが すでに目の前にあったのだ どんなにそれが美しくても どんなにそれがやさしくても あなたはそれに触れてはならない! その聖なる銀のしずくに

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