「ビッグ・スワン」(青森県・イオン下田の観覧車)

溝江 豪


薄暗い山道は分かれ
車は高速道路に入り
一センチほど宙に浮きながら走ってゆく
その行く手に待っていてくれるはずの
思いっ切り空に翼を拡げた大いなる容姿のスワンと
僕は久しぶりに逢うのだ

きっと
ゆっくり飛び立っては
ゆっくり着水し
八甲田の燦爛たる残雪と鳴き交わしながら
後ろの虚空とともに
流れる時間に耐えているだろう
スワンに近づいて見上げれば
羽からこぼれるあたたかい重力に
長旅で疲れの溜まった僕の背の丸みが
剥がされてはらはらと落ちるだろう
落ちて積もるものに
破れた旅鞄といっしょに
僕までが押さえ込まれたとすれば
あまりの快さに
僕は僕でなくなり
そのまま旅を終えたくなるかも知れない

だとしても
あの麗しい姿のビック・スワンに
僕は逢いたい


詩の投稿作品・1997年


詩の投稿作品


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