「朝」・レトロ

   見知らぬ街で生きるには
 
   時にはだれよりも早く目覚める
 
 
   ヤスリで削った冷たい風が
 
 
   沁みる
 
 
 
   方言も聞こえない
   こうして一人いれば
   故郷をなつかしめる
 
 
 
   東京はふるさとに想う
   人は少ないだろう
 
 
   だがわたしには
   あそこがふるさと
 
 
   人込みにまぎれて
   人の顔さえ区別がつかない
 
 
   そんな街にもどりたい
 
 
   鄙びた田舎では
   飾り物の道
 
   歩く人も無い
 
 
   鳥かごにおしこめられた
   きもちのまま
   生きてきた
 
 
   自転車でがたごと道を走った
 
 
   わたしは
   都会の者といわれ
 
 
   いつも浮いている
   雲のようにせつなかった
 
 
   朝がはじまる
 
   音も無く
 
 
   森閑としたした朝が
 
 
   山を仰ぐ朝が
 
 
   目をとじると
   江ノ島も見えるだろうか


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