FULL AUTO

レーシングとシューティングを合わせたようなゲームですが、結果としてはいまいちなものになっています。ゴッサムなどの「時速150kmでスライドしながら、数センチの間隔でパイロンを通過する」ような技術と集中力を求められるゲームが好きだという方は、おそらく物足りなさを感じると思います。一方で HALO みたいな戦略性があるかというと、全くありません。基本的に、敵車両(等)を破壊しまくってポイントを規定値まで稼いだら、あとは逃げ切るだけのゲームです。そのため、プレイ開始から数時間は楽しいものの、コツをつかんでしまうと途端につまらなくなってしまい、あとは惰性でプレイすることになります。

不満点は色々ありますが、その中で特に問題だと思うものを2つほど。ひとつは、説明不足であるという点。普通のサーキット レース(単純な周回もの)かと思って走っていると、実はラップ ノックアウト(最後尾が脱落するレース)だったりします。特に、キャリア モードの「GANG WAR」というシリーズについて。これは敵と味方に別れてチーム戦を行なうものなのですが、どういうわけかサーキットを右回りするグループと左回りするグループとがあります(したがって正面衝突が頻繁に起こります)。クリア条件は普通のサーキットと変わりない‘よう’です。――この形式についての説明がどこにもないので断言できません。まぁ私もソフトを作っている立場上、説明するのが面倒だということは理解できますが。……あと、説明が意味不明なレースもあります。「1位でゴールしないと強制リタイア」と書かれていたのですが、私はこれを「毎周1位で通過しないとその時点でリタイア」のことだと思ったのですが、そうではなくて、単に最終的に1位でゴールしろということのようです。リタイアというのはレースを途中で棄権することを意味すると思うのですが?

問題点そのニは、その GANG WAR での A.I. の程度の低さについて。前述のとおり敵と味方に別れているのですが、走行中に味方車両が自分に攻撃してきました。私は「あー、これはきっと敵だけでなく味方を破壊してもポイントになるんだろうな。味方の数が減るだけで」と思って彼を攻撃し、破壊しましたが、ポイントにはなりませんでした。おかしいなと思って味方車両の挙動をよく観察してみたら、彼らは前方にいる敵に向かって攻撃し続けていました。ただし、その間に何があろうとお構いなしに。――つまり、自分がすぐ前にいるにも関わらずマシンガンを前方に連射したり、建物の影になって絶対敵には当たらないのにミサイルを発射してみたりするわけです。失笑してしまいました。これ以外の挙動は比較的自然なものに仕上がっているので、おそらく技術的な問題があったわけではないと思うのですが。……時間が無くて作りこめなかったのでしょうか。

短所ばかり並べましたが、グラフィックスは綺麗です。というか NFS:MW に似ています。あれが出た約3ヵ月後にこれが(米国で)発売されているので、もしかすると同じような技術を使っているのかもしれません。建物などが崩壊する際の物理的事象についてきちんと計算しているとのことで、結構リアルです。

結局どういう人にこのゲームを推奨できるかというと、タイトル不足の Xbox360 で、短期間でもいいから楽しめるゲームを探している人、ということになります。年末以降は Forza2 や HALO3 といったメジャー タイトルが登場する予定ですので、その頃になったら、――或いはそれを待たずに、お蔵入りすることになるかもしれません。

12th November 2006