Fable −変わった意味で、自由な RPG ★★★★☆−

最近珍しい、オフラインのアクションロープレです。オンライン専用のものが一世を風靡している昨今において、このようなオフライン物は、ISDN 使用者にとって有り難いものです。原作は恐らく英語( British English )だと思いますが、ほぼ完全に日本語化されており、字幕だけでなく音声も日本語です。

まず「自由度が高い」という宣伝文句についてですが、普通、この言葉を聞くと「世界を自由に歩き回ることができる」ということを想像すると思います。しかし実際にプレイして思ったことは、どうやら意味が違うらしいということでした。ゲームの基本的な進め方は、ギルドと呼ばれる場所に行き、幾つか用意されているクエストから一つを選んでクリアしていくというものです。そして歩き回ることのできる場所は、町、砦、及びそれらをつなぐ道路だけであり、そこらの草原を散策するというふうなことはできません。で、どこに自由があるのかと考えたら、主人公、否、彼を操るプレーヤーの意思決定が自由であるということです。例えばだいたいのオンライン RPG では、実社会同様、プレーヤーに一定のモラルが要求されるでしょう。そして従来のオフライン RPG においては、主人公は何をしても正義の味方です。夜中に民家に侵入し、タンスを調べ、中のお金を盗み取ったとしても、です。
一方、このゲームには「モラル」という目に見える値があり、プレーヤーの行動によって増減します。そのことにより容姿が変化し、周囲の人々の反応も変わっていきます。しかし必ずしも、モラルを高く維持する必要はありません。わざと悪事を働き、モラルを低下させることも自由であり、そうしないと入手できないアイテムもあります。モラルを増加させるには、敵を倒したり、二者択一の場面で「善い選択」をしたり、または困っている人を助けたりすることがポイントです。減少させる方法も多数あって、「道徳的でない選択」をしたり、街にある物を破壊したり、人々を傷つけたり、他人の家に勝手に上がり込んだりすれば減少します。早い話が、一般社会において道徳的と思われる行動をとればモラルは増加し、そうでない行動をすれば減少します。そしてそのような行動(プレーヤー自身の選択)が可能であるという点で、自由度が高いと宣伝しているのだと思います。私としてはこの点は高く評価したいと思いますが、「クリア優先型」のプレーヤーにとってはあまり面白くないかもしれません。

次にシステム面について。まず、難易度は低めです。その一番の要因は、回復アイテムの豊富さでしょう。ヒットポイントやスキルパワー(マジックポイントのこと)を回復するアイテムは安価で強力だし、敵を倒すと手に入ることもあるし、なにより、ヒットポイントがゼロになっても即座に復活できるアイテムが売られていて、しかも同時に九個まで所持することができる点が素晴らしいと思います。おかげで戦闘で力尽きてゲームオーバーになったことはありません。アクションゲームの要である操作性については、剣や斧などの接近戦用の武器を振り回して戦う分には簡単ですが、弓やスキル(魔法のこと)の扱いには多少の熟練を要します。ただ、弓はほとんど使いません。だいたい敵が近づいてきて接近戦になるからです。スキルは単純な攻撃魔法から回復魔法、補助的な魔法まで色々ありますが、個人的にお勧めなのが時間の流れを遅くする魔法です。武器による攻撃が主体の御仁でも、これは覚えておくと便利です。しかし「アクション」と呼ばれる機能があるのですが、その使い方についての説明がなかったので、誤った操作により徒にモラルを下げてしまうことがありました。アクションとは、例えば「大笑いをする」とか「セクシーポーズ」といったことをして、相手に何かしらの印象を与えるものです。また、「同行させる」「待たせる」の二つのアクションは、クエストを進める上でかなり重要なアクションなのですが、実行するのに手間取ることがあります。
サウンドについては良いと思います。冒頭でも述べたように声は日本語化されていますが、不自然な翻訳は見当たりませんでした。BGM についても、ゲームの雰囲気がよく出ていると思います(スタッフロールに、「フィルハーモニー」と書かれていた気がします)。グラフィックスは、データ処理のタイミングの問題だと思いますが、地面が壊れかけることがよくありました。それを除けば、絵本のような風景、そしてリアルな(不気味、とまで言われるほどの)人物の描写が、独特の世界を表現していると思います。
そんなわけでシステムは全体として良好なのですが、或る場所において読み込みエラーが頻発するのは残念です。ドライブの問題だそうですが、もう少しタイムアウトまでの時間を長くしたほうがよいのではないかと思います。その場所は最低でも二回通過することになります。私の場合は五回くらい試行したら上手くいきましたが、人によっては何度挑戦してもエラーとなってしまい、結局クリアできないことになるかもしれませんので、ご注意ください。

実際にゲームを進めるにあたっては、最初は自分の思うままにプレイすることをお勧めします。現実の世界では、「本当はこうしたいんだけど」ということが多くあると思います。これはゲームですから、たとえ相手が一般人といえど、怒りを感じたら素直に殴っていいのです(あくまで、ゲームであり、しかも相手はコンピュータですから)。魔が差すことがあっても、それはそれで構わないのです。そうして主人公の成長していく過程を楽しむのが、初回のプレイ・スタイルとして適していると思います。極端な、実験的ともいえる行動をとるのは、二回目以降にしたほうがよいと思います。

22 April 2005